東海日本語ネットワーク(TNN)

日本語活動 Q&A - 教え方に関するもの

「教え方に関するもの」のQ&Aをお伝えします。質問一覧です。

 

No 相談内容
01 媒介語の使用について
02 レベル差や多様なニーズにどう対応すれば?
03 学習への興味を示してもらえないときは?
04 経験のないボランティアはどうすれば?
05 日本語教育について自分で勉強する方法は?
06 「さ行」「ざ行」の発音をどう直す?
07 ローマ字表記はどのように?
08 教室外での日本語使用への支援方法は?
09 「ね」と「よ」の使い分けは?
0100 「~と言いました」と「~と言っていました」の違いは?
0101 検定試験3級の対策クラスはどのようにすれば?
0102 教科書のモデル会話をどうやって教えれば?

質問の詳細と回答

No 相談内容
01 媒介語の使用について
質問

クラスで媒介語を使えばすぐに分かることが、日本語だとなかなか伝わりにくいことがあるのですが、やはり媒介語は使うべきじゃないんでしょうか。

私の活動しているところでは、媒介語を使わないことになっています。どうしていけないのかと聞いたところ、ことばの意味は100%重なるわけではないので、誤解を生みやすいということでした。もう一つ釈然としないのですが。

ボランティアの方が中国語ができるので、授業を中国語で行います。韓国の方がやめてしまったのですが、そのせいじゃないかと思っています。やはり媒介語を安易に使うべきではないと思うのですがいかがでしょうか。

日系の人が多いクラスなので、ポルトガル語を使って授業をするボランティアがいます。ボランティアがみんなポルトガル語ができるわけではないので、学習者に期待されては困ってしまいます。運営全体のことを考えて、媒介語の使用を控えてもらいたいのですが、なかなか理解してもらえません。

回答

「日本語は日本語を使って教えるべきだ」という直接法主義とでも言うべき考え方が根強くあります。しかし、直接法は教師にとって楽な教授法ではありません。日本語がまだよく分からない初級段階の学習者に日本語だけで授業をするには視覚教材を準備し、授業手順をよく考え、学習者に分かってもらえるように話さなければなりませんから、教師も訓練が必要です。一方、学習者は目と耳と頭を使い、教師の言葉の意味を推測しなければなりません。これにはかなりの集中力と推察力が要求されます。直接法は教師にとっても学習者にとっても楽な教え方ではありません。ですから、媒介語が使える状況ならば、媒介語を大いに利用していいと私は考えています。媒介語を授業の中で、いつ、何のために使うかに教師は気をつけること、それがとても大事だと思います。

一つのクラスにいろいろな国の人がいて、クラス全員が理解できる共通の媒介語がない場合があります。この場合はそもそも媒介語がないのですから、直接法で教えるしかありません。しかし、同国人が複数いるクラスでは、母語を使って助け合うことを認めてもいいと思います。教室では日本語以外は一切禁止という先生もいるようですが、クラスの状況を見て使用言語を考えるようにしたらいいと思います。

Q4のようにポルトガル語ができるボランティアの方がいるなら、その方がポルトガル語を使うことを控えさせることはないと思います。むしろその方のポルトガル語の知識を教室全体で生かす方法を工夫してはどうでしょうか。

いずれにしても直接法で教えざるを得ないのが一般的な状況でしょうから、理解しやすい日本語を話すこと、理解しやすい授業手順を工夫すること、利用できるものは何でも利用するという柔軟性が教師には求められていると思います。

 

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02 レベル差や多様なニーズにどう対応すれば?
質問1

学習者の間には日本語能力に少しずつ差があります。たとえば中級というクラスを作ってもそこに入る学習者は、初級のクラスが終わったばかりの人から、日本にもう何年も住んでいて、聞くことや話すことはとても上手という人など様々です。グループレッスンではこうしたレベル差のある時はどうしたらいいのでしょうか。どのレベルに合わせたらいいのでしょうか。

回答

先ず、レベル差はあって当然、レベル差があって困るのは学習者ではなく、私達の方であると考えるべきだと思います。それに「どのレベルに合わせるか」ではなく「グループの学習者ひとりひとりにあわせる」ようにこころがけることが大切です。レベル差というと「理解不十分な学習者」だけに目が向けられがちですが、物足りなさを感じている「進んだ」学習者にも配慮するべきです。それにプライドを傷つけないような注意も必要です。特に上級者は日本語に対する自信と学習意慾とともにプライドも高い人が多いようです。「そのことを知らなかった人」にしないような配慮も必要となります。

1. 既習事項を取り入れる

前回の復習をするとき、前回そのままのやりかたや例文ではなく、違う例文を出すとか、ゲーム形式にする。また、新しい項目に入るとき、それに関連した既習事項を初めにやる。たとえば、初級で「ひとつ、ふたつ」(『みんなの日本語』11課)に入る前に「ついたち、ふつか」(同5課)を復習する。日にちの言い方を学習していない、または忘れてしまった人にはここで学習できるし、すでにわかっている人は「ふつか」と「ふたつ」などの関連に気が付く。中級クラスで文章を読んだときは、次の回に復習として内容のQAをする。このとき指名しないで自由に答えてもらう。よくわかっている人には活躍の場であるし、欠席した人や理解不十分だった人は指名されるという心配をしないで学習できる。

2. 補助をつける、補習をする

一つのグループに複数のボランティアが参加できる場合は学習者の理解をたすけるために折に触れ補助説明をしたりする〈メインの授業進行を妨げないように〉。またペアワークのとき特に補助が必要な人とペアになったり、逆に物足りない人とペアになり学習事項を発展させる。学習者に意欲があり、時間が許せば授業後少し補習をする。

3. 教材を2種類用意する

中、上級のクラスでは話すことは得意だが、読むのは時間がかかる、またはその反対というように得意な(実は苦手な)分野がある人が多い。会話の得意な人用には新聞の投稿やアイデア募集記事など文章が短くて、発話が多くできるものを用意する。また読むのは得意だが会話は苦手な人(難しいのが読めるとは限らない)には巷で流行しているものに関するエッセイや、グループの人に共通の話題ですぐ理解できるものを用意する。時間内にそれら二つをやる。

質問2

学習者をいつも受け入れる教室では、毎回新しい人が入ったり、また、毎回出席するわけではなかったりする学習者が何人かいたりして、グループのメンバーが固定しないことがあります。この問題にどう対処したらいいのか悩んでいます。皆さんはどうしているのでしょうか。

回答

学期途中からの学習者も受け入れています。 「あかさたな」ではボランティア全員で検討し、作成したオリジナルテキストを使用しています。このテキストは日本語を母国語としない学習者が日本で生活するにあたって、日常よく使われる表現を中心に、入門から中級程度まで4段階に分けて編集されています。授業は、このテキストに沿って進めますが、あくまで会話中心の学習のため途中から参加してもあまり問題はありません。

習い事というのは、思い立ったときにすぐに始められることが大切だと思います。日本語を習うことも同じであり、いろいろな教室を探して、すぐ参加できるところがあるというのは、学習者にとって良いのではないでしょうか。

 

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03 学習への興味を示してもらえないときは?
質問

教室には遅れず休まず熱心に来てくれる学習者ですが、学習に関してはまったく熱心でなく、ただ座席に座っているだけのように見えます。はじめに音楽や遊びの話などをして気持ちをほぐすように努力しています。でも学習を始めるとぐっと無表情になり、まったくやる気がないように見えます。私の教え方がよくないのではないかと思い、聞いてみたのですが「よく分かる」という返事でした。このような場合、どのように指導していくのがよいのでしょうか。

回答1

学習を始めると無表情になるのは、ひとつには教師の話す量が多かったり、説明がむずかしかったりすると、それを聞き逃さないで聞いておこうとするため、そのような態度になるのではないでしょうか。またその人が教えた経験のある先生だったりすると、客観的になってしまい、教師にとって都合のよい学習者として授業に参加できない傾向になることも考えられます。

しかし遅れず休まず、教師の変更も望まないのであれば、その学習時間はやはり楽しいのだと思います。ただ参加しているだけで楽しく感じられるタイプの学習者はいます。表情が堅かったり何も言わなくても自分の学びだということでニーズを持って教室に来ているのだと思います。ですから、無視したり強引に何かさせようとせず、教師は自然体で振る舞えばよいと思います。その人に指導しなくてはいけないと考えず、聞くことだけでも学習は積み重ねられていると考えたらどうでしょう。

回答2

このような学習者は、「淋しい」「人恋しい」という気持ちが強く、とにかく教室で人と接していたいと思っていると思います。まずその気持ちをしっかりと受けとめてあげて、教えてあげるという気持ちばかりを強く持たないことです。たしかに、学習者と教師との相性ということもあります。でもその授業が学習者にとってまったくつまらなく、そして理解できないものであれば、そんなにきちんと出席して来ないと思います。今やっておられるように、食事のこと、習慣の違いなど、身近な日常のことを話題にして、相手の気持ちをほぐし、ゆっくり話し合い、気楽な雰囲気をつくることが第一だと思います。まず良き友だちになるということです。そしてその中で、学習者からどんなことでも一つ、日本語に関する質問が出れば、大成功です。そこではじめて教えるという立場に戻ればよいのではないでしょうか。

 

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04 経験のないボランティアはどうすれば?

質問

私は主婦で、今まで外で働いたことも人に何かを教えた経験もありません。たまたまこの教室がボランティアで日本語を教える人を募集していたので、こんな私でも、日本語は話せるので、お役に立てるのではないかと、参加しました。授業時間は2時間です。マンツーマンでやります。でも日本語を教えるための専門的な知識を持たないので、その2時間がもちません。それでついつい「ひらがな」ばかりを教え、書いてもらうという作業で、時間のたつのを待つ、という感じになりがちです。学習者がチラチラと時計を見出すと、やるせない気持ちになります。学習者が日本語がある程度できれば何とか、共通の話題を探して、交流しながら、分からないことを聞き出して少しでも生活に役立つことを教えてあげられるのに、と考えているのですが..。この教室はボランティアがそれぞれ自由に、お互いに干渉しないというやり方なので、自分で相手にあった方法を考えなければなりません。教科書はいろいろと用意されていて自由に選んで使えるのですが、どれもまだ私には親しめません。

回答1

そんなにやるせない気持ちで参加し続けることはないと思います。もっとご自分に合ったボランティア活動を探して参加されるようお勧めします。

回答2

まず、その教室のボランティア仲間と積極的に話し合ってその学習者に一番適切な指導方法を探す努力をすることです。また、この活動をずっと続けてゆく気持ちをお持ちでしたら、日本語の教え方について、あなたがしっかり勉強すべきだと思います。母語だからと言って日本語が簡単に教えられるというものではありません。いい加減な指導者に当たった学習者も災難だと思います。いろいろな機会を利用して指導方法を学び、また適当な教材を見つけて使用するのも大切なことです。

 

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05 日本語教育について自分で勉強する方法は?
質問

私は最近ボランティアを始めました。教え始めて、自分が今までいかに無意識に日本語を使っていたかということに気がつきました。また、教え方ももっと工夫ができるのではないかと思うようになりました。養成講座のある時間には仕事の都合で行くことができません。何とか自分でできる勉強方法はないでしょうか。

回答

日本語ボランティアをなさる方が、その難しさに気づき、日本語を教えるために必要な知識や技術を身に付けたい、何とか勉強したいと思われることは、すばらしいことですね。忙しい生活の中から時間を提供してボランティア活動をなさるうえに、学習時間を捻出するのはそれなりに大変なことだと思います。そういう方にも取りやすい養成講座ができると本当にいいと思います。通信講座を受けられるのも一つの方法かと思います。多くのボランティア仲間が通信講座を利用しています。また、日本語教育の月刊誌などを購読されれば、いろんな情報を得ることができ、学習の糸口が見つけられることと思います。できれば目標を等しくする仲間と一緒に学習会をされると、より深い理解ができるのではないでしょうか。

「教え方にもっと工夫を」ということですが、ご自分の教えている様子をテープなどにとり、授業観察をしてみるのはいかがでしょう。どんなときに学習者がよく反応し、どんなときに一人舞台になっているかなどが観察できるのではないでしょうか。これも仲間と一緒にお互いの授業観察をして意見を交換できるといいですね。教えるためにいろいろ下調べをしたり、どうすればわかりやすいかと悩んだりすることのほうが、本を読むことよりずっと勉強になる場合が多いと思います。あせらずに、でも今のお気持ちを忘れずに勉強なさってください。

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06 「さ行」「ざ行」の発音をどう直す?
質問

インドネシアから来ている若い技術研修生に日本語を教えています。しかし彼らにとってどうしてもうまくできないのが「さ行」「ざ行」の発音です。「さ、し、す、せ、そ」とゆっくり発音するとまあまあできるのですが、それをことばにして話すと、「じぇんじぇん」「じぇんぶ」「むじゅかしい」「ごじゃいます」等々となります。発音の注意は常にしているのですが、あまりしつこく言うと、日本語が嫌いになるのではないかと気遣っています。ある程度までは仕方がないと思っているのですが、聞いていて思わず笑いがこみあげてくるような今の話し方は、直してあげたいと考えています。録音して彼らに聞かせてみたら、やはり笑うのですが直すことは無理なようです。どうしたらいいのでしょうか。

回答1

はじめから「ザ行」だけを練習させてもあまりうまくいきません。ある程度日本語の音に慣れてくるまでは「ザ行」は「さ行」で発音してもらうのがいいでしょう。「全部」を「ぜんぶ」と言わせようとしてもどうしても「じぇんぶ」になりがちです。「じぇんぶ」より「せんぶ」と発音させる方が近似の音に聞こえます。「おはようごじゃいます」より「おはようごさいます」のほうがずっと自然でしょう。学習者もこれならできます。「ザ行」から正攻法でいくと直らないようです。

問題は、文字との対応です。「雑誌」も「冊子」も区別できなくなるおそれがあります。文字を見て、「サ」と「ザ」の違いを確認したり、意識させたりする必要があると思います。 近似の音というのは、「むじゅかしい」より「むすかしい」のほうがまだましかなというような意味です。お試しください。

回答2

外国人が日本語教師によくする100の質問』(酒入郁子他、バベルプレス)という本の中に指導法が載っていました。うまくいくかどうか分かりませんが、参考になるかもしれません。

 

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07 ローマ字表記はどのように?

質問

教室でのお知らせにローマ字も必要だと、初歩コース担当のボランティアから意見があり、ローマ字併記していますが、書く人により表記がまちまちです。ヘボン式を基本にしていますが、学習者が授業中、自分用に書いているメモを見ると、それぞれの母語によりさまざまな書き方をしています。日本人が書くローマ字は、ひらがなが読めない人には補助的に役立つかもしれませんが、必ずしも正しい発音で読んでもらえるとは限りません。各国別に、発音に近い日本語ローマ字表記をする必要があるでしょうか。あるいは、ローマ字の使用は出来るだけ少なくした方がよいのでしょうか。

回答1

ローマ字は子音と母音の組み合わせですから、日本語の「音」に関して体系的な理解を助けるという側面はあると思います。「て形」を教えるときなども、ローマ字を利用すると、動詞のグループ分けが説明しやすいという利点もあります。そういった意味では、表記は統一した方がいいと思います。

各国別にローマ字表記をするには相当な労力が必要ですし、母語の発音を代用すると、コミュニケーションに支障がでてしまうケースもあるのではないでしょうか。教える方は日本語の発音に照らして、統一したローマ字表記を導入し、学習者に表記と正しい発音とを結び付けてもらうのが良いと思います。ただ、ローマ字に頼りすぎて、かなが読めない(読もうとしない)ということのないよう、教える側は気をつける必要があるでしょう。

 

回答2

お役所、道路公団、公営・市営交通機関、あるいはデパートなどなど、町で見かけるローマ字は、ヘボン式が多いようですが、それでも統一されたものではないような気がします。固有名詞や地名はTOKYO、KYOTOなど一般に広まったものが抵抗なく使われています。また、日本語を勉強している人たちのメモを見ると、母国語の発音に近い書き方をしたり、「GA(K)KO」のように自分だけの方法だと言ってメモしている人もいます。これらのことからローマ字表記は補助的なものと考えて、あまり神経質にならない方がよいのではないでしょうか。ただし、当然のことですが、一続きの文章の中では、同じ表記方法を使って書くようにしなければなりません。

 

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08 教室外での日本語使用への支援方法は?
質問

日本に住んでいても、意外に教室以外で日本語を使わなくてもすんでしまい、そのためになかなか日本語の力が伸びないという学習者も少なくないようです。そこで是非、上級の日本語学習者(外国人)に、教室の外で、どのように日本語に触れる機会を作っているか、を聞かせていただきたいのですが。

回答

以前友達の女性2人(上級の学習者)に聞いたことを思い出してお話しします。日本に滞在していればそれだけで日本語と接する期間が長くなるわけですから、聴解力はかなり向上するはずです。でも確かに日常で日本語を話す必然的な状況というのは、実質ものを頼むときくらいしかないのかもしれません。買い物や書類にサインをする、などといったこともほとんど動作ですんでしまうことが多く、最低限のことばでもいけてしまいます。だからある程度聞くことは聞けても、上手く話せないという人が多いと思います。つまり、理解語彙は増えますが、使用語彙は増えていかないのです。それどころか使わなければ使用語彙はどんどん減っていきます。上級学習者の彼女たちでさえも母国の友達と一週間、あるいは一ヶ月一緒にいて母語でばかり話していたら、何か言おうと思ったときに日本語が出てこなくなるそうです。

そんな彼女たちの悩みは、直してくれる人がいないことです。親しい日本人といるときに使用する語彙や話の内容、つまり日常会話はある程度決まっています。ですから、その中にいれば、そこで話している言葉に関してはかなり流暢になりますが、それがいつも使っている言葉や内容以外のことになると自信がなかったり、実際にうまく話せない、ということもあるようです。でもいちいち直してもらうというのはコミュニケーションに支障を来すことになるし、日本人の方も気を使って、ほとんど直すことはありません。本当は逐一直して欲しいのですが、実際の日常生活ではそれはむずかしいようです。

私は、彼女たちの話を聞いていて、直してあげるということの大切さ、難しさを知ると同時に、それを抵抗なくできる場所としての日本語教室の役割は、とても重要なものなのだということを感じました。いずれにしても、最終的には日本語で話そうとする気持ちがいちばん大切だと思います。彼女たちも積極的に日本語会話の塾へ行って会話の力を磨いたり、教会など日本人に触れ合える場所に行って日本人と友達になったりしたそうです。また、上手に話せるようになるには日本人の言うことを真似するのがいいということです。テレビドラマを見て、台詞をまねて言ってみたり、一人二役で日本語でぶつぶつ呟く、といったこともやっていたと聞きました。

私たち日本人がするべきことは、学習者の「日本語を話したい、話さなければ」という気持ちを高めるための手助けといえるでしょう。

 

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09 「ね」と「よ」の使い分けは?
質問

ある生徒さんが、会社の人(日本人)と散歩しているとき、「いい天気ですね」と言われたので「そうですよ」と答えたら、変な顔をされたというのです。この場合「そうですね」になるのはわかりますが、「そうですね」と「そうですよ」の使い分けがうまく説明できません。 どのように説明すればいいのでしょうか。

回答

私たちが日常口にしていることばから、「ね」と「よ」が持つ意味を考えてみましょう。上の質問の場面では、2人とも「いい天気だ」ということが分かっています。その場合は「ね」が使われます。「ね」には確認する働き、同意を求める働きがありそうです。

一方「よ」はどうでしょう。

(1)「犬と猫とどっちが好き?」「犬。」「そう?猫の方がかわいいよ。」

(2)「あの人誰だっけ。」「山田さんのお姉さんだよ。」

このような例を考えると、「よ」には主張を表す働き、相手に情報を与える働きがあるようです。上の場面で「よ」を使うと、「あなたは今まで天気がいいことを知らなかったんですか。私は知っていましたよ。」という意味になって、相手に違和感を与えてしまいます。

以上のことをあなたの生徒にわかる日本語で、身近な例を用いて説明してください。また、「そうですね/よ」はイントネーションによっても意味が異なりますから、どんな言い方をするとどんな意味になるか考えてみましょう。

 

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0100 「~と言いました」と「~と言っていました」の違いは?
質問

先日、教室で生徒さんから「「田中さんは?と言いました。」と「田中さんは?と言っていました。」は、どう違いますか。」と質問されました。同じでないのは分かるのですが、うまく説明できなくて困りました。どのように違うと説明すればいいでしょうか。

回答

「田中さんは東京へ行くと言いました。」は田中さんがそう言ったという事実を言うだけの言い方です。 「田中さんは東京へ行くと言っていました。」は、田中さんが「私は東京へ行きます。」と言ったことをあなたが聞いて、それをあなたのともだちや誰かに教える時に使う言い方です。例えば、ともだちがあなたに「田中さんはあした暇でしょうか。」と聞いた時、あなたは「田中さんは東京へ行くと言っていましたよ。」と答えます。

田中さんが東京へ行くと言った、ということを他の人に教える必要のない日記等に書く場合は、「○月×日、田中さんは東京へ行くと言った(言いました)」となります。「?と言っていました。」は、あなたがAさんから聞いたことをBさんに教える時に使う言い方ですから「わたしは?と言っていました。」という言い方はほとんど使いません。

*この答え方は一つの提案です。初級レベルの学習者の頭の整理のためには、これ位の「割り切り型」の提示をした方がいいと思って、このような教え方をしています。これで当面の「頭の整理→運用」へは結びつくのでは、と思っています。

 

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0101 検定試験3級の対策クラスはどのようにすれば?
質問

検定試験3級を目指している生徒さんを今年初めて担当したのですが、問題集と聴解テストのテープを中心に授業を進めてきました。また、単調になるのを防ぐために「入門日本語」も使用しています。検定対策は初めてなので、どんなふうにすればよいかよく分かりませんでしたが、来年度からはテストの形式も変わると聞いて、ますます不安になりました。皆さんの体験から検定対策のよいアドバイスをお願いします。

回答

試験対策を立てるなら、まずは試験について勉強しておく方がいいでしょうね。能力試験の実施団体である日本国際教育協会(AIEJ)のホームページを開けると試験の実施要項、問題例などが見られます。

http://www.aiej.or.jp /ks/ksj1_1_top.html

試験に合格することが目標なのですから、試験範囲から問題が作られている市販の問題集を使うのがいいと思います。問題集の使い方ですが、まずは自力で問題を解いてもらい、答に自信がある問題とない問題にはっきり印をつけてもらいましょう。もし自信をもって答えられない問題が多ければ受験レベルが高すぎるかもしれません。授業では、「自信をもって間違えた問題」を中心に、なぜ間違えたのかを一緒に考えるといいでしょう。答合わせだけなら先生は要りません。それから、日本語能力以外に受験のコツを意識してもらうことも大事です。

日本語能力試験には「話す」「書く」がありません。テープで聞いたこと、読解の問題で読んだことについて短くまとめて書くとか、話してみることも全体的な日本語能力を伸ばすのにいいでしょう。

 

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0102 教科書のモデル会話をどうやって教えれば?
質問

私たちの教室では自分たちでモデル会話を作ってテープに吹き込んだりしています。でも、授業でどうやってモデル会話を教えたらいいのか、テープの使い方もこれでいいのかなあと悩んでいます。皆さんは教科書のモデル会話をどうやって教えているのでしょうか。いいアイデアがあったら是非教えてください。

回答

モデル会話文を使った会話の授業には、モデル会話の内容と学習者のレベルによって、2通りのやり方があると思います。モデル会話文を先に出す方法(先出し)と後から出す方法(後出し)です。先出しの方法は多くの方がやっていると思います。

先出しの方法を使うときは、まずテープを何回も聴いてもらいます。ただ聴いてくださいと指示するだけではなくて、テープを聴かせる前に一つだけ質問をします。テープを聴いた後で質問の答えを言ってもらって、答えが違っていたり、学習者の意見が分かれたらもう一度聴いてもらいます。いくつか質問を用意しておいて、一つずつ質問を出して、その都度聴いてもらいます。こうすると何回もテープを聴くことになるので、自然に会話文を覚える手助けをすることになります。

質問が全部終わったら、今度は「違い聞き取り」というのをします。先生が一人で会話文を演じるのですが、そのときに何カ所かモデル会話とは違うことを言います。違いがいくつあるか、どこが違ったかを学習者に言ってもらいます。これも会話文を聴かせるためにやっています。すぐにリピートさせるのではなく、テープや教師の一人会話を何回も聴かせるのはいい方法だと思います。

モデル会話の意味がしっかり分かってからリピートしてもらうように気をつけています。文字を見ないと覚えられないと言う学習者もいますから、教科書を見てはダメだとは言いません。でも、教科書の文を読んだときは、その後で同じ文をもう一度、今度は教科書ではなくてこちらを見て言わせるようにしています。このようなやり方でモデル会話の暗記を助けることができると思います。

後出しの方法を使うときは、はじめに教師と学習者、または学習者同士でロールプレイをします。モデル会話と似たような会話をまず作ってみて、その後で「例えばこんな会話もできますね」という感じでモデル会話を聴かせ、新しい単語や表現を教えます。初級では先出しが多くなりますが、レベルがだんだん上がってきたら、後出しの方法を使う方が学習者は既習のことばを動員しようとして頭を使うようです。

先出しの授業では、モデル会話を理解し、どうにか覚えるところまでで時間切れになることが少なくありません。とくにモデル会話が長かったり、新しい語彙や表現が多いとモデル会話の理解に時間をとられてしまうこともあります。会話の授業なのですから、学習者が自分の本当に表現したいことを表現する時間を作るようにしたいと思うのですが、なかなかうまくいきません。モデル会話の長さや難易度をよく考えて、必要ならば書き換えることも必要でしょう。モデル会話に振り回されないようにしたいと思っています。

 

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